最初に結論から言います。
ピアノ以外の楽器プレイヤーも鍵盤を触るべし!
はい、いきなりですが今回はそういう話です。
ピアノ以外の楽器、ギターやヴァイオリン、管楽器などいろいろな楽器プレイヤーの方がいると思いますが、そういう方々にとってもピアノないし鍵盤というツールを触ることにはメリットがあるよという話をします。
目次
鍵盤楽器のすすめ
ずっしーの音楽教室で出している動画や様々な解説では、見ての通りピアノや鍵盤を中心に話を進めることが多いです。
しかし音楽をやっている人は何もピアノ奏者や鍵盤奏者だけではなく、ギターや管楽器、弦楽器など様々いらっしゃることでしょう。
それなのにずっしーと来たらまるでみんながみんなピアノ弾いてるみたいなノリで解説しやがって・・・と思っている方もいるかもしれません。
いやあほんと、ずっしー自身も他の楽器プレイヤーの方には親切じゃないなあといつも申し訳なく思っているわけですが・・・ここはあえて言わせてください。
全楽器プレイヤーの皆さん、軽くでいいから鍵盤扱えるようになろう!!
あ!無理って言わないで!ちょっと待って!どういうことかちゃんと説明するから!
鍵盤のすごいところとは?
はい、なぜこんなことを言うのかというとですね、ピアノないし鍵盤というものが「音楽の仕組みを理解するのに最強のツール」だからなんです。
ずっしーが教え広めたい「耳コピアレンジなどの自由な音楽スタイル」を目指すためには音楽のしくみを理解することが必須です。
だから理解するために使うツール、すなわち使う楽器が非常に、非っ常~~~に大事になってくるわけです。
もちろんどんな楽器でも音楽の仕組みを学ぶことは可能ですが、それぞれの楽器にはそれぞれの特性があり、こと音楽の中身を理解するという点で見たときにやりやすいものとそうでないものがあるのも事実。
そんな数ある楽器たちの中でも、「鍵盤」という楽器こそが音楽のしくみを学ぶために最も適したツールだとずっしーは確信しているのです。
実は作曲家・編曲家など音楽のしくみに精通している人たちには鍵盤楽器の素養がある人が非常に多いです。
それほど鍵盤というインターフェースは調や和音などの音楽の構造を理解するのにはもってこいなものなんですね。
ではいったい鍵盤のどういうところが音楽を学びやすいポイントなのでしょうか。見ていきましょう!
シンプルな音の並び方がすごい
一つ目は「音が高さ順に“単一で一列に”並んでいる」というところです。
そう聞くとなんか当たり前では?って感じしますよね。でもこれ、色々な楽器を見てみるとこの当たり前がすごく重要だということがわかります。
例えばギターだとどうなっているかというと、
一般的なチューニングだとギターの音はまず上の図のように並んでいます。弦を何も押さえずに鳴らすと「ミラレソシミ~♪」となるわけですね。
そして当然ギターは弦を指で押さえることで音の高さを変えることができるわけですが、
例えば上のようにラの列を見てみると、ギターのフレットを一つずつ右に行くと音が半音ずつ上がっていくという仕組みになっているのです。ということはですよ…?
このようになんと6つもの音の並びのラインが複雑に絡み合っていることになるのです!!ギターというのは一本の弦という楽器を6つ並べてくっつけたみたいな構造になっているんですね。
こう考えるとかなり複雑に見えて、メロディラインやコードの動き、音の積み重なり方などの重要な仕組みをとらえるのは骨が折れそうな感じがします。
もちろんこの並びだからこそ、コードが形で覚えやすいとかメロディの弾きやすさとか演奏上の利点はいっぱいあるわけですが。
ただ音楽のしくみを理解しようというときにこのシステムの上で思考するのはいささか大変が過ぎるという感じがしてしまいます。
一方の鍵盤はというとギターのように6列も音の並びはなくシンプルに1本。一つの音は一つの鍵盤。実に単純明快です。
音の高低が一本のラインにあることによって和音の積み重なり方が一目瞭然になるという点が特に大きなメリットですね。
またギター以外にも弦が複数並んでいる楽器、例えばベースやウクレレやマンドリン、ヴァイオリンやチェロ等も基本的に同じような原理の難しさを持っています。
広い音域と同時発音数がすごい
「なるほど、ギターなどの複数の弦がある楽器はそういう見え方の難しさがあるんだな」とわかったところで、次なる鍵盤のいいところを見ていきましょう。
そもそもピアノという楽器はけっこう他と比べて特殊な性格を持っています。何かというと「一つの音にこだわることを捨てた楽器」なのです。一体どういうことか?
ピアノの鍵盤は押したら簡単に音が出せます。どんな初心者でも一音を鳴らしたときの音はプロと大差ありません。同じ強さで押せば同じように音が出ます。
他の楽器では往々にして、最初のたった一音を綺麗に出すことがけっこう難しかったりするんですよね。そこがピアノとの大きな差です。
しかしそんな手軽さと引き換えとでも言うのでしょうか。ピアノは音が出たら最後、その後はもうどうにも手出しができないのです。勝手に減衰していく音…我々にできるのは指を離しその音を止めることだけ…。
そう、ピアノは誰でも簡単に音が出せる代わりに一つの音の音程や音量や音色の味付けをすることができない楽器なのです。
他の楽器にはビブラートをかけたりロングトーンで響かせたりその途中で強弱や音色に変化をつけて、いわゆる「歌う」ということができるものが多くありますが、ピアノは構造上そういったことを一切放棄しています。
しかし! ピアノはこういった犠牲を払うことで代わりにとてつもないものを手に入れました・・・それが「圧倒的な音域」と、「圧倒的な同時発音数」です。
このように、実はピアノの88鍵盤が奏でることのできる音域はほとんどすべての楽器を飲み込む超広範囲にわたっているのです。
低音域のイメージがあるベースや高音域に強そうなピッコロでも実際はピアノの守備範囲の中だったりします。意外!
そしてもう一つの「同時発音数」。これは言わずもがな、いくらでも押した分だけ鳴ってくれる仕様なのが鍵盤。やる必要全くありませんが88鍵全部押せば88個の音の和音が鳴ります。
他の楽器ではそうはいきません。先ほどのギターのような弦が張られている系の楽器ならば最大でも弦の本数分までの和音ですし、たいていの木管楽器や金管楽器なら常に一音しか出ません。
こういった特性からピアノは「一人オーケストラ」だの「楽器の王様」だのいろいろと異名がつけられているわけですね。
このピアノの広い音域と同時発音数を考えると、和音やコード進行などの重要な仕組みを学ぶには鍵盤が圧倒的に有利だということが言えます。
なんせ「ほとんど全ての和音が表現できる&一望できる」し「広い音域で相対的に楽曲の全体像が見渡せる」わけだからもう言うこと無しってなもんです。
しかしこの後に紹介する3つ目のポイントが鍵盤の一番ありがたいメリットかもしれません。さてそれは一体どんなところなのでしょうか?
黒鍵と白鍵の見分けやすさがすごい
ピアノおよび鍵盤の文字通り白黒はっきりしたデザイン、これこそが最も重要なポイントであるとずっしーは考えます。
この白鍵と黒鍵の位置や色分けはただ見た目のためにこうなっているわけではありません。現代の音楽の根幹をなす仕組みがそこには反映されているのです。
それは「調」の仕組みです。
白鍵と黒鍵の区分けは「調の中の音」と「調の外の音」を極めて明快に見分けられるよう設計された結果なのです。これの何がそこまで重要なのでしょうか?
現代の音楽においては「調の中の音」を基本的なパーツとして楽曲を組み立て、いかに工夫して「調の外の音」をスパイスとして入れられるかというところに肝があるのです。
この動画のように「調の外の音」である黒鍵を上手くスパイスとして入れていくことでだんだんと都会的でおしゃれなサウンドが作れるようになります。
オシャレなアレンジ、ジャズっぽい雰囲気、躍動感のある展開、そういったものは「調の中の音」だけを使っていても上手く作れません。「調の中の音」のみでは簡単に言うと童謡みたいなシンプルな曲調にしかなりにくいのです。
つまるところ、音楽がどんな手法でどのように響くか、どんな特徴の音がどんな雰囲気をもたらすかといったことを知るためには「調の中の音」と「調の外の音」を明確に区別しながら学んでいくことが極めて重要だということです。
その点で圧倒的に有利な楽器こそが「鍵盤」であるということなのです。(→具体的な調の話はこちら)
しかしここで勘のいい人はあることに気づいたかもしれません。皮肉にも鍵盤はこの黒鍵と白鍵の明確に区別されたデザインが仇となって生まれてしまうある弱点も同時に併せ持っています。
「ハ長調以外のキーだと逆にわかりづらくね?」
まさにその通り、この「白鍵=調の中の音」&「黒鍵=調の外の音」というありがたい構造はハ長調以外の11個のキーでは見事に崩れ去り、逆に調の中と外が見分けづらくさえなってしまうのです。
☆例えばニ長調の場合
これを頭の中でこう↓↓見えていないといけない。それも現実の色に逆らって!
でも安心してください。解決策はちゃんとあります。生のピアノではなく電子ピアノや電子キーボードであればトランスポーズ機能というありがたい機能がついてくることが多いです。
トランスポーズ機能というのは簡単に言うと「ハ長調の鍵盤を弾きながら実際に鳴っている音は他のキーの音」ということができる機能のことです。
これを上手く使えば12種類のどんな調でも「白鍵=調の中の音」&「黒鍵=調の外の音」という鍵盤のツールを使って中身の分析をしたり自分で作編曲を学んだりできるのです。
お気づきでしょうか。僕が最初から「ピアノが最強のツール」ではなく「“鍵盤”が最強のツール」だと言い続けていることに。
そう、音楽を学ぶのに最強のツールはピアノではなく
「トランスポーズ機能付きの鍵盤楽器」
である、とここに結論付けます!!(ドンッ)
鍵盤への向き合い方
ここまででずっしーの鍵盤推しの理由をわかっていただいたところで、具体的に他の楽器プレイヤーのみなさんがどのように鍵盤楽器を始めればいいのかという話をしましょう。
まず第一に「別にピアノを上手く弾ける必要はない」ということを言っておきます。指が早く動くとかそういうのは必要ないです。
上の例でも挙げた通り、ピアノないし鍵盤楽器というのは押せばだれでも同じように綺麗な音が出るしくみなので、人に聴かせようってわけでもない限り初心者でも普通に扱いやすいのです。
パフォーマンスの楽器としてではなく音楽を「目で見る」ための道具・ツールであるという認識でいいのです。
例えば英語を学ぶときにはノートとペンが必要ですが、音楽ならば鍵盤と指を使う。そんな感じに理解してください。
どんな鍵盤を選べばいい?
そして大事なのが鍵盤選びですね。お値段、機能、サイズ、等々いろいろ考える要素はありますがやはり「本格的にピアノ演奏をするわけではない」ということを念頭に考えると選択肢は絞れそうです。
「お手頃価格で」「あまりかさ張らず」「トランスポーズ機能がついている」の3点を満たす電子キーボードをずっしー的セレクションで以下にご紹介したいと思います。
ヤマハ「ポータトーン」PSR-E273
ヤマハの「ポータトーン」という名前でおなじみのお手軽キーボードシリーズの一つです。
お値段はだいたい1万5000円前後。→価格コム参考
61鍵盤でサイズは94cm × 10.6cm × 31.7cm、重さ4kgという感じで手で簡単に持って移動できるレベルですね。
見た目はこんな感じ。
こちらの機種、タッチの強弱がつけられず強く押しても弱く押しても一定のボリュームで音が鳴ります。その点は買う前に知っておきましょう。
そして重要なのが・・・
うん、ちゃんとありますね!トランスポーズ機能!
あとさっきピアノの音域の広さを声高に主張したばかりなのに61鍵盤でいいのかよ!というつっこみが入りそうですね。
61鍵盤というのはフルの88鍵盤に対して両端の一オクターブくらいをなくしたものという感じです。
このくらいあれば学び用としてはかなり十分とずっしーは思います。実際問題、お手軽なキーボードで88鍵盤はなかなかレアです。ですが72鍵盤というのもあるので興味のある方は探してみるといいかもしれません。
※ピアノ曲の演奏用として考えるとと61鍵盤だとわりとすぐに足りなくなってしまうことがあるので注意です。
CASIO「カシオトーン」CT-S200
ヤマハのポータトーンと同系統の機種としてCASIOのカシオトーンというものもあります。
お値段はだいたい1万5000円程度から。→価格コム参考
61鍵盤でサイズは93cm × 7.3cm × 25.6cm、重さ3.3kgという感じでさらに軽い仕様となっています。
見た目はこんな感じ。
取っ手がついてるのも持ち運びやすくて面白いですよね。
そしてやはり大事なのが・・・
大丈夫ですね!ちゃんとトランスポーズ機能ついてます!
そしてこちらの機種もポータトーンと同様にタッチの強弱がつけられません。
ですが上位機種の「CT-S300」という機種ならタッチレスポンスもついてきて強弱表現が可能です。お値段は少し上がって2万円程度となっています。
「CT-S300」は島村楽器限定モデルとして販売されているようなので興味のある方はチェックしてみるとよいでしょう。
Roland GO:PIANO88
でもやっぱり88鍵盤がええな・・・という方はこちらのRolandの製品があります。
お値段はだいたい3万円程度から。→価格コム参考
88鍵盤でサイズは128cm × 8.7cm × 29cm、重さ7.0kgという感じですね。見た目はこんな感じ。
ここまでくるとタッチの強弱とトランスポーズはもちろんついています。
この価格帯では珍しい88鍵のモデルなので、学ぶだけでなくちょっとした演奏もしてみたいと考えている人にはけっこうおすすめです。
上二つより値段は高いものの、総合的に見るとかなりコスパが良いと感じます。
「本格的な電子ピアノを買う勇気はちょっとないけどとりあえずやってみたい」くらいの悩める方々にはちょうどいい入り口となるでしょう。
はい、こんな感じでどんな楽器をやっている人でも鍵盤を気軽に導入してみてほしいという話でした。
とりあえずは触ってみる、もしそれで色々興味が湧いてピアノ演奏をしてみたくなったら88鍵ピアノタッチの電子ピアノを買ってみるというのもありです。
ずっしーの教える「耳コピアレンジスタイル」に興味を持ってくれたなら、とりあえず上で挙げた最低限の電子キーボードだけでも学んでいけるように解説は作っているのでぜひ耳コピアレンジ習得法を進めてみてください。
形のない音楽を「目で見える」ようにするための道具として、鍵盤を使ってみませんか?
音の感覚や調などを考える、作曲・編曲する、そして何より音の高低が他の楽器に比べ、鍵盤楽器は圧倒的に分かりやすい。
ピアノはハ長調平均律に特化した(音の悪い)教育用(作曲用)打楽器だと思っています。
トランスポーズ機能については、例に上げられたニ長調が移動ドの観点から記載されているように、移動ドを分かっている方でないと難しいのでは…?と見受けました。
移調楽器や、ギターのカポについて分かっていないと使いこなすのは難しそう(;´Д`)
ボーカロイド「勝ち」