絶対音感のこと

みんなの憧れの的になることも多い絶対音感。

コードアレンジや耳コピを学んでいきたいと思っている人の中にもきっと絶対音感を持っている人がいると思うので、そのメリットやデメリット、相対音感を鍛える上で気を付けなければならないことをここで話しておきたいと思います。

意外と多い絶対音感持ち

小さいころにピアノを習っていた人の中には、程度の差はあれ絶対音感を持っている人がけっこう多いんだなとずっしーは日頃から感じています。

なぜかというと自分のような「1ミリも絶対音感を持ってない人間」にはできないことをサラッとやる人が多いからです。

例えば街中でどこからともなく音楽が聞こえてきたときにその曲のキーがわかったり、何調は明るいイメージだとかを持っていたり、特に意識せずに固定ドで音をとらえていたり。

そういうことは相対音感だけの人にはできないことなんですね。

「固定ド」というのはどんな調でもドレミファソラシの音階を移調させないやり方のことです。

にもかかわらず本人は「自分は絶対音感はもってない」と言う人がけっこう多いんですよ、不思議なことに。

おそらく絶対音感は物心つかないような年齢で身についてしまうことから本人にとって当たり前すぎてそれが絶対音感だということに気づかないからでしょう。

「絶対音感がない」状態を経験したことがないからどの感覚が絶対音感によるものなのかわからないということが起きるのではないかと思います。

以前Twitterで絶対音感に関するこんなアンケートを採りました。6000票以上も集まって大変ありがたいです。

このアンケート、一番下の「全くわからない」以外は大なり小なり絶対音感を持っている人です。

なんと70%もの人が少なからず絶対音感的な感覚があるという結果になりました。

もちろん投票してくださった方々はずっしーのフォロワーさんが多いでしょうから、音楽経験者がたくさんいるだろうということは想像に難くないですがそれにしても多いですよね。(※皆さんが適当な嘘回答はしていないと信じます笑)

非常に便利な絶対音感を持っている人が多いことは大変いいことだとは思いますが、ちょっと問題が出てしまうことがあるんですね。

固定ドと移動ド

今現在、音階を歌うときや音感の訓練を行うときに使われている方法は2つあります。その二つが互いにぶつかり、とある問題を起こしているのです。

音名と階名の混乱

きらきら星のメロディはきっと皆さん誰でも一度は聴いたことがあると思います。ABCの歌にも使われている有名なメロディーのあれですね。

「ドードーソーソーラーラーソー ファーファーミーミーレーレードー」

これはハ長調の場合で、例えばト長調にずらしてやると絶対音感の人にはこう聞こえます。

「ソーソーレーレーミーミーレー ドードーシーシーラーラーソー」

これは「固定ド」と呼ばれる方法で音感を身につけたためで、要するに調の機能など関係なしに音名をそのまま使う方法です。

一方相対音感の人はどう聞こえるかというと、ト長調でもハ長調と変わらず

「ドードーソーソーラーラーソー ファーファーミーミーレーレードー」と聞こえます。

こちらの方法は「移動ド」と呼び、あくまで調に基づいた音の機能を階名としてとらえる方法です。

 

おやおや、これってまずいことになってませんか?

ハ長調以外の調では移動ドと固定ドで聞こえ方が変わってしまいました。音楽的には同じことなのにもかかわらずです。

これの何がまずいか、例えばこれまでに絶対音感をある程度身につけた人がアレンジなどできるようになりたくて調性の音感を鍛えようと移動ドを使い始めたら。

そんなことしたら固定ドで身についたものと移動ドの話がごっちゃごちゃに混乱してわけわかんないことになってしまいますよね。

ずっしーがお教えする音感のトレーニング方法も移動ドを使ったものになるので絶対音感の人はできないことになってしまいます。(和音の音感トレーニングは固定ド移動ド関係なしにやって頂いて大丈夫です)

また相対音感の移動ド派の人と絶対音感の固定ド派の人でコミュニケーションがとりづらくなってしまう問題も出てきますね、どちらも互いに相手を違和感があると感じるはずです。

ほんなら「相対音感の人が固定ドの方に合わせればいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、それは原理的に無理なんです。

仮に絶対音感の無い人が移動ドの100倍くらいの手間かけて固定ドを身につけたとして、得られるメリットが一つもありません。固定ドは絶対音感があってこそ意味がある方法なのです。

かくして絶対音感「固定ド派」と相対音感「移動ド派」の間に溝が生まれてしまいました。

固定ドの弊害

しかしそもそもこれ、「固定ド VS 移動ド」みたいに対立する話じゃあないんです。

だって固定ドというのは音の高さを知ることができるものだし、移動ドというのは調性という音楽のしくみを理解するためのものです。この二つって全然違う概念であって、決して相反するものではなく両立できるもののはずなんです。

問題なのは、概念の異なるこの二つを同じ「ドレミファソラシ」という道具を使って表してしまったこと。

階名を表現する道具はもとより「ドレミファソラシ」しかありません。一方音名は「ハニホヘトイロ」とか「CDEFGAB」などいろいろ選択肢があったにもかかわらず階名と同じドレミファソラシでかぶせてしまいました。

このせいで本来両立できたはずの二つの間に多大な混乱を招く事態に。

固定ドこんにゃろう!

ドレミファソラシ以外の方法を使ってくれれば万事解決だったのに!

しかも始末が悪いのは「幹音」だけでゴリ押ししているということ。

どういうことかというと、例えば「レ#」や「レ♭」もただ「レ」とだけ言ってしまうということ。だからメロディで「ラレミファーファーミファソー」とか言われてもそれがどんなメロディか、どんな調なのかがまるではっきりしないという問題まで発生するのです。

固定音名でやるならせめて12種類に個別の名前をつけてくれればよかったのに・・・現在の固定ドはコミュニケーションツールとしての機能すら果たしてはくれません。

固定ドこんにゃろう!!!

この移動ド固定ドで同じ「ドレミファソラシ」を使ってしまっているのはまさに教育システムの失敗というほかないでしょう。正そうにも何十年もこれでやってきてしまっているので今更「はいせーの」で変えるわけにもいかない、残念でなりません。

世の中には音楽以外の分野でもこういった「本当は直した方がいいけど普及しちゃったから仕方なくそのまま」というものがけっこうあります。まあその話は長くなるので割愛…

それでも絶対音感は素晴らしい

固定ドの問題とは別に、やはり絶対音感というのは多大なメリットがある素晴らしい音感だとずっしーは思います。絶対音感はのちのち無敵になれる可能性がある能力だと思うのです。

一番大きい利点は「転調に強い」ということ。

絶対音感は調に関係なく常に音の絶対的な高さを感じることができるのでどんなに転調されても調を見失わずに済みます。あるいはそもそも調性の薄い曲でも楽々音を追いかけられるでしょう。

これが相対音感だけの人なら、少しトリッキーな転調をされたら「あれ?今どの調だ?」と右往左往してまた手探りで調を確認することになります。曲が変わるたびに調の確認が必要なのもややめんどうですね。

このことから絶対音感は自由なセッションや即興、アドリブの要素があるジャズなどの音楽をやる人にとっては非常に強力な武器になると言えます。

また絶対音感は相対音感に比べて「反応速度が速いと感じます。

相対音感は調を基準に音を判別する能力です。調というのは音楽の時間的な流れがないと生じないものなので、相対音感では音をとらえるのに進行していく音楽の変化を感じ取る必要があります。よってある程度反応するのに時間を要します。

一方の絶対音感はいかなる音楽の流れであろうと関係なく音の絶対的な高さを感じ取ることができるので相対音感に比べて音をとらえるのは速いと言えるでしょう。

このように絶対音感は様々な形で武器になります。

違う言い方をすれば、相対音感というのが「音楽の音感」であるのに対し絶対音感は「音そのものへの音感」と言うことができるのではないでしょうか。全くベクトルの異なるこの二つの音感はそれぞれ互いを支えながらあらゆる場面での無敵の対応力を実現できる可能性を秘めています。

落としどころは

それゆえに、相対音感すなわち調性の感覚を持たず絶対音感だけしかない状態の人は非常にもったいないと感じるのです。

絶対音感それだけではただなんとなくメロディがわかったりなんとなくコードを付けたりできる程度ですが、調性の感覚も合わせて習得すればその先には耳コピでもアレンジでも即興でもあらゆるところでその能力の盤石さを保証してくれる存在になるはずなのですから。

実際、絶対音感がある人で相対音感もしっかりあるという人はあまり多くは見たことがありません。

おそらく先の固定ド移動ド対立問題が一因になってしまっているのではないかと思います。固定ドのみでの絶対音感教育を続けていて、階名を通して調性の感覚を身につける機会に恵まれない人が多いのではないでしょうか。

そもそも絶対音感だからといって音名だけ気にして調のしくみに頓着しないのは望ましいことではないと思います。絶対音感があろうがなかろうが、現在の音楽のしくみの肝である調性のことは深く理解した方がいいに決まっています。絶対音感の人も階名を使った調性感覚は身につけるべきだと思います。

ですが現在の対立した二つのやり方では固定ドをある程度習得した人が移動ドの方法をそのまま使うと混乱が生じる可能性が高いです。

すごくセンスのある人は固定ドのまま調性の機能を感覚的に理解してコードを自在に操ったり即興や作編曲をする人もいますが、なかなか稀な存在です。

現状とりあえずの解決策は、「ドレミファソラシ」以外の何かで階名を名付けて相対音感を鍛えるしかないのかもしれません。それでも絶対音感持ち側と相対音感のみ側でのコミュニケーションは壁を残したままになってしまいますが。

そんなわけでずっしーの音楽教室での解説はなるべく固定ド移動ドどちらの人にも理解できるようなものにしていきたいと思っています。

 

 

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