音感の鍛え方~音階編~

メロディを聴き取れるようになるには「音階を判別する音感」が必要だという話を前の記事で解説しました。

相対音感、調性に基づいた階名がわかるようになる方法、考え方をここでさらに詳しく掘り下げていきます。

相対音感の勘違い

ずっしーが耳コピアレンジマンになることを目指し始めたとき何はともあれ音感が必要だということに考え至り、それまで何ひとつ音感らしい音感がなかったずっしーはまずメロディを聴き取れるようになろうと思いました。

絶対音感はもう遅いけど相対音感なら今からでも習得できると聞きさっそく相対音感を鍛えていくことにしました。

―――相対音感というのは「ある音の高さを基準に他の音の高さを判別する能力」と。ふむふむなるほどね、音名がわからなくても一つ基準の音をもらえばそこからどのくらい音が上がったか下がったかわかるようになればいいってことかな。

たしかにメロディってそもそも音が上がったり下がったりするだけだもんな~ってことは音程のパターンを全部聴き分けられるようになればどんなメロディでも聴き取れるようになるんじゃね?

メロディだとまあせいぜい1オクターブ上1オクターブ下くらいまでの跳躍だけ考えればよさそうだな、ってことは音程の種類は上に12種類、それと下にも12種類だから・・・

よっしゃ!全部で24種類だけ覚えこんじゃえばあとはなんでも聴きとれるようになるんだ!これで最強や!

と、こんな仮説を立ててこの24種類の音程の跳躍を聴きとるトレーニングを始めたのです。

ですがこの試み、結論を言うとうまくいきませんでした。まあトレーニング自体はある程度できて音程を当てることもできるようにはなったのですが、実際に曲のメロディを聴きとる能力は上がらなかったのです。

調を考えなきゃ意味がない

なぜこのトレーニングは意味がなかったのか。それは「調」を考慮していなかったから。

私たちの頭はどうやらメロディを聴くとき「前の音から~度の音程とんで次の音」という風に処理しているわけではないようなのです。

ですから先ほどの図のようなイメージの方法でトレーニングしても実際の音楽を聴く耳とはマッチしていないのであまり役に立たないトレーニングになってしまったというお話。

では私たちの、音楽を聴く耳とはどのようなものなのか。

どうやら私たちの頭の中では「常に調を基準に」音程を判断しているようなのです。

相対音感を支える基準の音というのは直前に聞いた音というわけではなく、そのメロディが作られている調というわけです。

したがってメロディを聴き取れるようになるにはどんなトレーニングが有効なのかというと、「調を基準に階名を聴き分けるトレーニング」です。

その調を土台にして、

「何かの音を聞けばその階名ドレミファソラシがわかる」

あるいは逆に

「階名ドレミファソラシから音を思い浮かべることができる」

という状態を目指すわけです。

移動ド唱法

ずっしーにはあるとき、こんな体験がありました。

音程聞き分けトレーニングが思うように結果に結びつかずモヤモヤしながら適当に鍵盤を押していたときのこと。

もちろんそのときは音感が全然なかったため、頭の中でイメージした音を鍵盤で正確にとらえられず、外しながらたどたどしくメロディを追っていました。

しかしある一瞬、頭の中で鳴ったメロディに「ラ~ファ~♪」という言葉が聴こえ、指は自然とその鍵盤を押していて、さらに鳴った音は頭の中でイメージした音そのものだったのです。

「今のは一体どういうことだ・・・?」

と困惑しつつも何か重要なひらめきがあることを感じました。

あとでわかったのは、その「ラ~ファ~♪」というフレーズはずっと昔、小学生くらいの頃に歌っていたドレミの歌のフレーズだったのです。

奇しくも幼少期に歌っていたそのドレミの歌は歌詞ではなく階名を使って歌っていたのです。何の気なしに。

その記憶は音程という音情報と階名という言葉を強くリンクさせ、現在になってなお浮かんだメロディをきっかけに「ラ~ファ~♪」という言葉を引っ張り出したのです。

言葉では表現しづらいのですが、そのときの音と言葉が強く結びついている感覚は非常に「しっくり」きたのを覚えています。

「もしやこんな感じでいろんなフレーズを階名と結び付けて覚えていけば音を判別できるようになるのでは?」

と思い至り、そしてそれはまさに正解であったのです。

この「メロディを階名で歌って音と言葉をリンクさせる」という方法を移動ド唱法と呼ぶと知ったのはそれから少し経ってからでした。

この移動ド唱法で訓練を続けていくと、

「初めて聴くメロディの階名が聞こえるようになる」

「ドレミを見れば頭の中でそのメロディを鳴らせるようになる」

「頭の中でメロディを作ったり即興でメロディを作れるようになる」

といったことができるようになります。

移動ド唱法のやり方

では実際に移動ド唱法というのはどうやってやればよいのでしょうか?

言ってしまえば「曲の調に沿ってメロディをドレミで歌って音と階名をセットで覚えていく」ということに尽きます。

とは言っても、具体的にとなるといろいろ気になることが出てきますよね。

長調と短調

「長調と短調って分けて考えなくていいの?」

という疑問がまずわいてくると思います。これはもう結論から言うと分けなくてOKです。

長調は「ドレミファソラシ」短調は「ラシドレミファソ」としてやれば

平行調の長調と短調はセットで一つの調としてしまって問題ないわけです。

区別しなくて本当に問題ないのかと思うかもしれませんが、そもそも長調と短調は境目が曖昧なものなのです。曲によっては実際どっちとも言い切れないというものも多いです。

なんとなく長調っぽいところもあり短調っぽいところもある。実際、長調短調なんてそんな程度のものなのです。長調っぽい/短調っぽいコード進行、メロディ、展開というのはわりと細かくあって、曲全体としてどっち寄りかな~ってことでその曲が長調だ短調だと決めちゃっていたりします。

例えばハ長調かイ短調か、なんてのは最後にC(ドミソ)でジャーンと終われば長調、Am(ラドミ)で終われば短調ってことになる、そんな曖昧なものだったりするんですね。

実は短調を「ラシドレミファソ」ではなく長調と同じ「ドレミファソラシ」としてやる方法もありますが、これだとけっこう問題が起こります。

長短の境目が曖昧な曲ではいちいち切り替えるのか、そもそもどこで切り替えるのかなど常に悩まなくてはなりません。

少なくともこの方法は耳コピアレンジをやる上では効果的ではないでしょう。古典的なクラシック音楽とかならおそらく効果はあるのでしょうが・・・

ずっしーのようなアレンジなどをしたいという人には長短区別しない方法を絶対におすすめします。

調の外の音

実際の曲ではドレミファソラシだけ、つまりダイアトニックスケールだけでできてるということはほとんどなく、部分的に調性をはみ出した要素が入っていることが多いです。

どういうことかというと、メロディもドレミファソラシに#や♭がついて半音上がったり下がったりすることがあるということです。

もちろんこのようにメロディが変位したときは移動ド唱法もそれ相応の対応をさせてあげなくてはいけません。音が違えば名前も違うものがついてなくては合理的ではないでしょう。

しかしこれをソシャープ~ラシド~♪」なんて言うのは文字数的に現実的じゃないですよね。なにか一文字で言える階名を付けてあげるのが望ましいところです。

別に言葉自体は何でもいいのですが、できるだけみんなで統一した方が色々便利だろうということは想像に難くありません。そしてなんとすでにそういうものを考案されている方がいて「西塚式」という方法があります。

このようにドレミファソラシ以外の5つの音にデ、リ、フィ、サ、チの文字を割り当てるというやり方です。先ほどのソシャープ~ラシド~♪」~ラシド~♪」と歌えばいいということになります。

この方法ならば調の外の音がどんなに入ってきても対応できますね。

もちろんこれ、調が変わった場合はそれに合わせて割り当てます。例えばヘ長調ならこんな感じ。

ずっしーはずっとこの西塚式を使ってやってきました。効果的ですしおすすめです。


さてこれで準備は整いました。これで晴れて移動ド唱法のトレーニングを始められます。

しかしながらこれだけで「はいどうぞ」と言われても

「まず何から手を付ければいいの?」

「聴いたメロディの階名はどうやって調べればいいの?」

「曲の調はどうやったらわかるの?」

といった疑問が生じる人もいると思います。その辺の話もまた別記事で解説していきたいと思います。

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4 Comments

choko

ずっしーさんはじめまして!
全ての記事、楽しく読ませていただきました。
自分が求めていたような事がまさしくピンポイントで書かれていて何度も読み返してます。

早速トレーニングしてみたい…!のですが、具体的な方法は次回からなのですね。
すごく楽しみです。応援してます!って伝えたかったのでコメントさせていただきました。
それでは失礼します。

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耳コピマスターしたい人

分かりやすい解説、これを待ってました!ありがとうございます。

ところで「長調と短調を区別しない」と書きつつ「『ラシドレミ』を、『ドレミファソ』と同じにすると問題が起こる」と記されているところがわかりません。
「区別しない」という文字を読んだときは「ああ、自分が耳コピしたい曲のドをとにかく探せばよく、短調だったらフラット3つになるけど気にするなって意味かな」と思ってたのですが、そうではなく、短調だと思ったら「ラ」をルートにして練習した方が良いという事でしょうか?
拙文で恐縮です、質問の意味がわからない等あればご遠慮なくお申し付けください。

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Ryo

ずっしーさん、
記事もYouTubeも楽しく見させて頂いております!

私も「長調と短調」の部分に関しまして質問があり、コメントさせて頂きました。

移動ド唱法とは、
①調の判定(ジャーンと終わらせて主音を把握)
②調に合わせて階名で歌う
というものだと理解しました。

もしもマイナースケールの曲を使った場合、
①の時点ではマイナースケールのルートを感じると思います。(AマイナースケールであればAを感じる)

この場合、次のどちらの練習が正しいのでしょうか?

(1)Aをドとして歌う
→メジャースケールなので、ミとラとシがフラットしているが、それを意識して西塚式で対応。

(2)Aをラとして歌う
→マイナースケールだと認めることで、Cメジャーと同じ音名を同じ階名で歌える。

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